笏(しゃく)の意味合い

よく聞かれることがありますので笏(しゃく)の意味合いについて数点申し上げますが、、一般的には笏は『式次第などをメモしたもの』だという説明がなされていますがただそれだけではありません。もしそれだけならば普通笏は左手に持ち、右に筆、という考えが普通でしょう。
実は隠された(?そうでもないかな)意味があります。
笏は右手に持ち、目上の人と逢う時は敬礼作法『正笏(しょうしゃく=両手で持ちます)』をします。ここに意味があるのです。
基本、笏を持たない者(直垂=ひたたれという衣装=以下の殿上に上がることのできない武士)は退く作法(起立・着座等の所作は全て後ずさりする作法)しか許されません。
しかし笏をもつ者だけが「進む作法」=貴人の前で前に進む作法=が許されるのです。
なぜだと思いますか?
答えは簡単。保安上の理由です。右手に笏、貴人の前では正笏で敬礼、という決まりですからすぐに刀に手を掛ける事が出来ないからです。
笏を放りだしたりするならばすぐに取り押さえられて、敵意有りの者と見なされます。
ですから抜刀の所作を一動作遅らせることが出来ます。
もともと唐の長安の宮殿内で豪族同士の斬り合いが絶えないので、帝が刀を抜く手にコツというものを持たせた、という記録があります。
恐らく『コツ≒骨≒象牙でできた板状の物』がいわゆる牙笏(げしゃく=奈良時代から平安時代中期ころまで用いられました)の事だと思われます。
ですから、笏をもつ者は『敵意無し』を表しているのです。
ちなみに持ち方も三本指で挟むように持って、片手で放り出せないように、厳重に持っています。