お神輿の掛け声の各パターン

多くの日本の皆様は近隣の神社でお神輿を奉輿(ほうよ)されていることをご覧になっていると思いますが、その掛け声は、様々であることは御存じでしょうか?

私の出身地では『ドッコイソーリャ』と声を掛けますが、その語源は「六根清浄」であります。
東京では『ソイヤ ソイヤ』と聞こえますが、よく聞くと「ほりゃ」「スラ」「シャー(私だけ)」「ご~るぅあぁぁぁぁ(私だけ)」

あまり聞きなれないかもしれませんが、神奈川県北部から山梨県南部に広く分布する掛け声は
「やいとーさっせ」「よいとーさーせ」であります。
今日はこの「やいとーさっせ」について、方言学の観点から解析してみます。

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☝ 「やいとーさっせ」の神輿たち。すべて神奈川県山側。



近年の国学者ではこの掛け声について
「弥遠永に栄えしめ給え=いやとうながにさかえしめたまえ」
と説明していますが、そのような平安時代以前の、京都の言葉が本当にこの田舎に伝来し、それが語り継がれていることは考えにくい、と当職は考えています。

なぜならばこの神奈川県は鎌倉時代には坂東訛りが強く、上方とは全く言語が通じない程であったということを研究者が指摘しています。

そこで相模地方の方言を研究されていた、故 日野資純博士の論考を基に紐解きますと、この掛け声のある地方には共通の方言があります。それは『さっせー』と言いますが、意味は「くださいね」という意味です。
この言葉は神奈川県の厚木より南には『らっせー』と転訛します。つまり「くださいね」は「けーらっせ」となります。

『よいと―』という言葉は「威勢よく」という意味に使われます。
つまり『よいとーさーせ』『やいとーさーせ』は
『威勢よくやってくださいね』という意味の方言ですね。