神社の建築の大別

神社には信仰の系統や地域性によってスタイルがありますが、関係ない場合もあります。
かなり大きな分け方ですが、

①直線的な意匠の社殿=神明造り
②曲線的な作りの神社=神明造り以外の神社(代表的には流れ造りです)

等があります

①直線的な意匠の神社
一般的に伊勢の神宮系の神社ならば、その地域が御厨(みくりや=神饌苑=名目上の神宮の神前に供えられる物を作るということになっていますが、いわゆる中世の寄進地系荘園です)であった場合は、神宮を強調する為、『神明造』が多く見られますが、それだけではなく、単純に作りが簡単なことから多く用いられることもあり、明治時代には特に多く造られました。
利点としては、
・費用を抑えられること。
・作りが簡単なこと。
欠点としては
・彫刻が入れられないこと(全く入れられないことは無いのですが、入れると変です)
・屋根高の割に面積が取れないこと(ご本家、伊勢の神宮様は祈祷用の神楽殿は神明造りではありません。これは神明造りは大人数の収容には向いていないことを良く知っているからです)
等があります。

②曲線の意匠の神社(主に流造りで説明します)
利点
・荘厳華麗な装飾が際限なく施せる(様式に縛りがあまり無い為です)
・前の庇が長く延びている為、雨に濡れにくく、祭祀に便利である
・権現作りに代表されるように、建物を連結して拡張できる(神明造りもできないことはありませんが、基本は棟ごとの単独建築です)

欠点
・高い建築技術が求められ、専門家でないと造れません。
・際限なく彫刻を入れたり斗組を入れると、際限なくお金がかかります

等があります。

近代の様子を例にすると、明治・大正期には神明造りが多く造られましたが、昭和に入ると官・国幣社で改築する場合も「流れ権現」が多く見られるようになります。

靖国神社は拝殿には大きな唐破風を備え、多くの参拝者が同時にお参りできるように工夫されていますが、御本殿は斎庭(ゆにわ)の奥にひっそりと厳かに御鎮座されています。

また明治神宮滋賀県多賀大社は昭和建築の大傑作で見事な流造の神社です。昭和神社建築の歴史に残る傑作です。