木遣と上棟式

木遣(きやり)は主に祭りの時と、個人宅の建設では上棟式の時に歌われます。

伊勢神宮式年遷宮では、御用材を引き廻すときに歌われ、また内外両御正宮正殿の中心にある心御柱を立柱した後に、その柱の周りを突き固める杵築祭(こつきさい)の時に斎員の神職が歌う歌があり、内容は木遣りとほぼ一緒です。

また、同神宮では一般建築の上棟に相当する、妻の拝みに棟飾りを付ける際にも儀式があり、この時も木遣は歌われていたと思われますが、現在では行われていません。

江戸で歌われる木遣り歌はいくつかありますが、一般的なものは「真鶴」に続いて「手古」ですが、湘南の場合は真鶴の部分と手古の部分がくっついていて、併せて『梃子前』として歌われます。

諸説あるところですが、私の地元は河があり、昔千石船が河を登る時に河の両岸に船子(ふなこ)の若い衆が大勢いて、船頭が木遣りのアンニ(=兄貴)を歌い、船子の若衆がオンドド(=弟)を歌ったというのが一般的に言われている説です。

厚木市にも船子という地名が残されており、また半原の宮大工も仕事が暇な時には船子をして金を稼いでいたそうなので、こうした中で神奈川県中央部にご当地の木遣りが伝わったと思われます。

また、神奈川県内で見ても、三浦半島の突端部である三崎港や神奈川県西部の小田原にも網曳き歌としての木遣りがあり、双方は距離は遠いものの似たような木遣りがあり、漁師町の特徴を備えた歌が残されていて、今でも祭りの日には神輿の掛け声として歌われています。